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本尊掛松
枚方市茄子作南町299
                                                        2008.07.16訪問

 京阪電鉄交野線・交野市駅の南西約500m、枚方市と交野市の市界をなす旧東高野街道の西側(枚方市側)、周囲を住宅に囲まれた中に位置する。
 駅からの道筋は輻輳していて目印となるものはない。

 旧高野街道の西側、玉垣に囲まれた霊地に立つ案内には、
 「元享元年(1321)11月16日夜、融通念仏宗中興の祖・法明上人(1279--1349)が、男山八幡神の霊夢をうけ、深江(大阪市)の草庵から男山へ向かう途中、ここで八幡宮の使者に出会い、十一尊天得如来の画像を授かった。
 上人はこれを路傍の松に掛け、その前で称名念仏を唱え、感激のあまり踊り出した。これが同宗の念仏踊りの始まりであるとされている。
 やがて夜も更け、一夜の宿を乞うたかのが犬井甚兵衛屋敷(茄子作北町)であったという。

 『本尊掛松』は、この画像を掛けたことに由来し、別名『ホトトギス松』とも言われるのは、ホトトギスの鳴き声を『ホンゾンカケタカ』と聞きなすためである。 1994 枚方市教育委員会
とある。
 なお、傍らの{「本尊掛之松」との石版には、
 「(前略)後醍醐天皇の御宇、元享元年十一月十五日夜 深江の法明上人が男山八幡宮の神勅を蒙り融通の正統を伝承ありければ 歓喜の余り神慮に酬ひ奉らんとて 翌十六日弟子を伴い男山に詣でんと此処まで来玉へば 霊宝を奉じて深江に向ふ男山の社人等と偶然出会ひ 共に霊夢の感得を謝し寶器を授与し 宗祖大師感得の十一尊曼陀羅尊像を此の松に掛け玉ひ 忝けなさの余り融通念仏南無阿弥陀仏と踊躍念仏せり
 即ち 御本尊を掛け奉りし故 之れを本尊掛松又は杜鵑松(トケンマツ)と称す」
とある。(杜鵑・トケン=ホトトギス)
 
 これについて、大阪府全志(1922)には、
 「本尊掛松の址
 本尊掛松の址は川越村南方東高野街道の西側にあり、明治30年前後までは垂枝四方に延び、蒼翠滴りて琴韻常に起り、極めて多趣の名木たりしが、遂に祝融の災禍に罹りて今は朽株と化し、植継の稚松ありて傍の一碑に融通念仏天徳本尊掛松の十字を勒せり。
 後醍醐天皇の元享元年11月17日融通念仏宗の中興法明上人、石清水八幡宮の神慮を感得し(「永らく融通念仏の奉燈を伝授する器を舞っていたが、貴方こそその人材である。石清水八幡に預けてある融通念仏の霊宝を受け取り法統を継げ」とのお告げ)、将に社に詣でんとして深江の草庵より来りしに、恰も此にて霊仏を上人に授けんとして(「霊宝を法明上人に渡せ」とのお告げがあったという)八幡より来れる宮使に逢い、霊仏を受けて欣喜に堪へず、其の天得如来を此の松の梢に掛け、鳥羽天皇より賜はりたる鏡鐘を打ち 、率いし所の仏徒と共に踊躍し、当宗の謂ゆる念仏踊りは是れに権興せりといふ。
 是れ此の樹名を為せる所以にして、一に杜鵑松とも呼べり。蓋し此の地は杜鵑の名區にあらざれども、本尊掛松の称呼の杜鵑の声調に似たるに因みて、此の名を為せしものならん」
とある。


 旧東高野街道西側の玉垣に囲まれた霊地の中央、舟形光背の中に右手に錫杖を、左手に宝珠をもった法明上人像(高:2.3m)が立つ(像の前に「中祖法名上人」との木札あり)

 この上人像は江戸時代の作で(裏面に「弘化2巳年-1845-4月24日 世話人交野門中」とある)、光背向かって右に『彌陀所伝融通念仏授四万人為回向造』(弥陀から伝わる融通念仏を4万人に授け回向の為に造る)と、左に『法明上人御舊蹟 勧進沙門■山敬立』ある。

 上人像の向かって左に松の若木(2代目)が茂るが、法明上人由来の古松は明治30年頃に枯死したという。


本尊掛松・本尊 
 
同・全景

 融通念仏宗とは、日本仏教十三宗の一で(成立順では6番目、浄土宗・浄土真宗より前)、永久5年(1117・平安末期)に良忍上人(1072--1132)が阿弥陀仏から直接与えられた偈(教え)に基づき開かれたという。(大阪市平野区の大念仏寺が総本山)

 その教えとは、簡単にいえば、偈に「一人一切人 一切人一人・・・」とあるように、“一人が称える念仏が多くの人の念仏と融通し合い(一体化)、多くの人の念仏も一人の念仏に融合し合って、全体として大きな力となり皆が浄土往生ができるから、毎日毎日念仏を唱えよ”との教えという。
 同宗の法統は、開祖良人上人から第6世良鎮上人までは繋がっていたが、良鎮が寿永元年(1182)に亡くなった後、良き後継者に恵まれず139年間途絶えていたが、元享元年第7代法明上人によって復活されたといわれ、その舞台が本尊掛松の地となる。

 融通念仏宗の本尊は通常見られるような仏像ではなく、阿弥陀如来を主尊とし、その周りを観音菩薩・勢至菩薩・光明王菩薩・法蔵菩薩・徳蔵菩薩・三明王菩薩・薬上菩薩・虚空蔵菩薩・月光菩薩・日光菩薩の10菩薩が囲んだ融通念仏宗特有の画像で、これを『十一尊天得如来』と称して通常掛け軸状にして礼拝するといわれ、法明上人が石清水八幡から受け取ったという霊宝とは、この掛け軸状の十一尊天得如来だったと思われる。

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