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摂津(豊島郡)の式内社/阿比太神社
大阪府箕面市桜ヶ丘1丁目
祭神−−素盞鳴尊
                                                               2009.08.31参詣

 延喜式神名帳に、『摂津国豊島郡 阿比太神社 大 月次新嘗』とある式内大社。

 阪急箕面線・牧落駅の西約1km、住宅地のなかに鎮座する。

※鎮座由緒
 当社社頭に掲げる由緒によれば、
 「当社は延喜式内の神社にして素盞鳴(スサノヲ)を祀れり。応神天皇2年の奉祀なりと伝うれど確たる文献なし。されど日本後記に載するところによれば、遠く仁明天皇嘉祥3年(850)正月従五位下を授かり給ふとあり、・・・」
とある。応神2年は疑問としても、9世紀以前からの神社であることは確からしい。

 大阪府全志(1922)によれば、
 「古くは牧の荘の大宮と称し、後、牛頭天王とも呼べり。往時の鎮座地は今の大字平尾の阿比太森にして、後(中世以降か)、此地に移転し、旧地は阿比太の三字を残せり。・・・」
とある(他にも同趣旨の資料あり)
 往時の鎮座地とは、今の箕面駅の北、平尾の東南部の小丘・阿比太の森とされるが、その場所は古老に聞いても不明という(式内社調査報告1977、今も箕面公園の北方に平尾の地名はある)

 社名・阿比太の由緒は不明だが、継体紀10年条の、
 「百済は灼莫古(ヤクマクコ)将軍・日本人の科野阿比太(シナのアヒタ)を遣わして、高麗の使・安定らにつきそわせ来朝し好を結んだ」
との記事、および欽明紀11年の
 「3月12日、日本の使人阿比太が3隻の舟を率いてやってきたという」
との百済本紀引用文などから、6世紀の頃、百済との外交使節として往来した阿比太なる人物に係わるのではという。
 その阿比太について、新撰姓氏禄(815)に、
 「左京神別(天神) 大貞連 (饒)速日命(ニギハヤヒ)十五世孫弥加利(ミカリ)大連之後也
                  上宮太子(聖徳太子)摂政の年、大椋官に任ず。時に家辺に大俣楊柳あり。
                  太子巻向宮巡行の時、親しく樹を指し、之を問ふ。即ち阿比太連、詣り、大俣連を賜ふ。
                  四世孫正六位上千継等、天平神護元年(765)、字を改めて大貞連を賜ふ」 
とあることから、聖徳太子の頃(7世紀初頭)に“阿比太連”と称する氏族があり、また当社が、江戸期以前は「阿比太の宮」と呼ばれていた(摂津志・1735)ことから、阿比太連の氏神社が当社ではないかという。
 阿比太連とは物部氏の一族で、先代旧事本紀・天孫本記(9世紀後半)によれば、その祖とされる弥加利(御狩)連はニギハヤヒ14世の孫で、物部守屋(〜587)の兄という。

※祭神
 今の祭神は『スサノヲ』となっているが、これは明治以降のことで、江戸時代までは牛頭天王と称していたという(摂津志・1735)。ゴズテンノウ奉斎については、天正の頃、織田信長による社寺破却を免れるために、信長が信仰したゴズテンノウを詐称したものというが、疑問。強力な防疫神であるゴズテンノウを祀ることで、疫病・災厄から逃れたいという素朴な願いを受けてのものであろう。

 一方、このゴズテンノウ奉斎について、式内社調査報告(1977)が引用する豊島郡誌(1736)には
 「・・・今なほ阿比太の宮と称す。祭神をゴズテンノウとなすは不是に似たり。按ずるに姓氏禄左京神別に大貞連(阿比太連の後裔)あり。然れば阿比太の連の祖・ニギハヤヒを祀れるならん」(大意)
とあり、ゴズテンノウを否定し、阿比太連の祖神・ニギハヤヒとしている。
 当社が阿比太連(後の大貞連)の氏神社とすれば、物部氏の遠祖・ニギハヤヒ、あるいは阿比太連の祖・ミカリ連を祀ったとするのが妥当であろう。
 ただ由緒には、
 「御神徳としては文学武道の守護神、また悪疫旱魃に誠に霊験的な神として・・・」
と、スサノヲに包含されるゴズテンノウの面影を引きずっている。

※社殿等
 道路脇の一鳥居をくぐって参道を進むと、玉垣に囲まれた境内正面に“黒木の鳥居”が立ち、その奥に拝殿・本殿が建つ。神社明細帳(1934)によれば“本殿 流造 柿葺”とあるが、今、樹木越しに銅板葺きの社殿が見えるだけ詳細不明。

 黒木の鳥居とは、最も原始的且つ素朴な様式で、樹皮の付いたままの丸太で造られた古式の鳥居をいう(皮を剥いだのが白木の鳥居)。今、境内入口に立つ鳥居の表面には樹皮を模したような模様が入っているが、丸太ではないらしい。
 資料によれば、境内社として八幡神社・稲荷神社があるというが、稲荷社はあるものの八幡社は見当たらない。

阿比太神社/一の鳥居
阿比太神社・一の鳥居
阿比太神社/社標石
同・社標
阿比太神社/拝殿
同・拝殿
(社頭の鳥居が黒木鳥居)

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