トップページへ戻る

摂津(川辺郡)の式内社/鴨神社
兵庫県川西市加茂1丁目
祭神−−別雷神
                                                            2011.08.03参詣

 延喜式神名帳に、『摂津国川辺郡 鴨神社』とある式内社。

 JR福知山線・川西池田駅の南約600m。駅の東を南北に走る県道13号線を南下、加茂交番前交差点を右折(西へ)、猪名川を渡ってすこし進んだ右手(北側)に鎮座する。
 標高40mの伊丹段丘北東部の高地(標高40m)に位置する当地一帯には、弥生後期から平安時代にわたる集落址である加茂遺跡(最盛期:弥生中期には東西約700m南北約300mの規模で、東西にのびる居住地と西側の墓域があったという)が広がり、当社境内からも4基の住居跡が発掘されたという。

※由緒
 境内に祭神名・由緒等を記した案内板なく、社務所も無人。

 川西市史(1974)によれば、
 「今は祭神を別雷神(ワケイカヅチ)としているが、これは江戸時代に成立した摂陽群談(1701)に、『祭神別雷神、山城国加茂神社に同じ、当社本居の村民、洛に登って加茂に詣るに、社家火を忌事を許すと也』とあることからのもので、別雷神を祀るようになったのは後世のことと思われる。
 むしろ、この地方の豪族と思われる鴨君(カモノキミ)または鴨部祝(カモベノハフリ)の祖先神を祭神としたとみる方がよいのではなかろうか」
という(式内社調査報告-1977-も同じ)

 鴨君および鴨部祝とは、新撰姓氏禄(815)
 「摂津国皇別 鴨君 彦坐命(開化天皇皇子)之後也」
 「摂津国神別(地祇) 鴨部祝 賀茂朝臣同祖 大国主神之後也」
とある氏族だが、同じ“鴨”を名乗るものの、出自は皇別・神別と異なり別系統と思われる。また当社に関係するのがどちらの氏族か不詳。

※祭神
 今の祭神・別雷神(ワケイカヅチ)について諸資料とも異論はみえない。
 ただ兵庫県神社誌(1937)には、祭神・別雷神とはするものの、異説として
 「従来の典籍には大国主神と云ひ又事代主命といひ鴨君の祖彦坐命なりといふ。
 されども当加茂の地は鴨祝部(カモノハフリベ)の住みにしにより加茂といふ地名を負はせ、其鴨祝部が祖神たる大国主神若しくは事代主命を祭りたるものなるべし。
 然るに後世唯加茂といふ地名の山城の加茂と同名なるによりて別雷神を祭り、往古の祭神を忘れたるものなるべし」
と、鴨祝部の祖神説(オオクニヌシ又はコトシロヌシ)を挙げている。

 神社誌にいう、ワケイカヅチ・オオクニヌシ(又はコトシロヌシ)・ヒコニイマスのいずれも賀茂氏系の祭神だが、賀茂氏系譜には大きく
 @八咫烏に化して神武天皇を導いたとされる賀茂建角身命(カモタケツヌミ)を始祖とする天神系の氏族で、上賀茂・下鴨両社の神官家。ワケイカヅチはこの系譜に属する。
 Aオオモノヌシ(オオクニヌシ)の子である太田田根子命(オオタタネコ)の孫・大鴨積命(オオカモツミ)を始祖とする三輪氏(大神氏)と同じ地祇系の氏族で(古事記に「オオタタネコは神君・鴨君の祖先である」とある)、大和国葛上郡鴨(現奈良県御所市)を本貫とする。
 なお、オオカモツミとタケツヌミを異名同神とする説もあり、とすれば、@・Aは同じ系譜となる。
 B開化天皇の皇子・彦坐命(ヒコニイマス・崇神天皇の異母弟)を始祖とする氏族だが、その詳細は不詳。
の3統があり、上記・鴨祝部氏は系譜Aの地祇系賀茂氏、鴨君氏は系譜Bとなる。

 一方、今の祭神・別雷神とは賀茂別雷神社(上賀茂神社)の祭神で、山城国風土記に、火雷神(ホノイカツチ)と賀茂建角身命の娘・玉依姫との間に生まれたとの説話(丹塗矢説話)があるように、天神系賀茂氏が奉斎する神であり、鴨祝部氏・鴨君氏系とは別系統となり、その意味では、神社誌が「唯加茂という地名の山城の加茂と同名なるによりて云々」というのは当を得ている。

 これらのことから、当社本来の祭神は鴨祝部の祖・オオタタネコ(又はオオクニヌシ=オオモノヌシ)を祀るとするのが妥当だろうが、当社が大きく賀茂氏にかかわる神社とすれば、最も著名なワケイカツチをを祀るのに大きな違和感はない。

※社殿等
 一の鳥居・二の鳥居と立つ参道の奥に拝殿(千鳥破風・軒唐破風付切妻造・銅板葺)が、背後の神域内に本殿(流造・銅板葺)が鎮座する。
 本・拝殿共に天明年間(1781--89)建立の旧社殿を解体し、昭和45年コンクリート造に新築したものという(式内社調査報告)
 ただ、社殿が新しいことからみて阪神大震災で被災し、改修再建されたものであろう。

鴨神社/二の鳥居
鴨神社・二の鳥居
鴨神社/拝殿
同・拝殿
鴨神社/本殿
同・本殿

◎末社
 本殿の左に末社合祀殿および延寿社が並んで鎮座する。
 ・合祀殿−−八幡神社(応神天皇)・松尾神社(八十神)・稲荷神社(大月姫神)
 ・延寿社−−伊耶那岐命・伊耶那美命(老人の健康・延命・長寿の神というが、理由不明)
 本殿の右に末社合祀殿、その右奥にも合祀殿が鎮座する。
 ・合祀殿−−天照皇大神社(日若宮尊)・春日神社(手力雄命)・愛宕神社(天香具土神)
 ・合祀殿(右奥)−−熊野神社(伊奘諾尊)・荒神社(天香具土神、庭津日神とも)・多賀神社(大国主尊)
 いずれの末社も、その勧請由緒・時期など不明(祭神名は神社誌による)

鴨神社/末社合祀殿
末社合祀殿(松尾・八幡・稲荷社)
鴨神社/末社合祀殿
末社合祀殿(春日・天照・愛宕社)

トップページへ戻る