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庚申信仰/尊勝院庚申尊・猿田彦神社

 かつて京都では、八坂の庚申堂に“粟田口庚申堂”と“太秦・山ノ内庚申堂”を加えて『京洛三庚申』と呼ばれていたが、今も形を変えて存続している。

尊勝院庚申尊−−粟田口庚申堂−−京都市東山区粟田口北町  2007.9.23参詣
 京の名所図会の先魁となった「都名所図会」(江戸中期、安永9年1780刊)に、
 『東三条金蔵寺御猿堂は青蓮院御門跡の院内なり。三猿の像は伝教大師・最澄の作』
との記事がある。この東三条金蔵寺が“粟田口庚申堂”と呼ばれたものだが、管見した限りでは名所図会以外に資料がなく、その由緒などは不明。
 この金蔵寺御猿堂を継承しているとされるのが尊勝院で、京都地下鉄東西線・東山駅から三条通りを東進、白川小学校東の細い道を南へ入った丘の上にある。

 由緒書きによれば、
 『明治維新までは三条白川橋東南一帯の広い境内に、元三大師(ガンザンタイシ、912〜85、第18代天台宗座主)を祀る本堂の他に地蔵堂・庚申堂・弁天堂・多賀社・梅宮社などがあったが、維新後いろいろ変動があり、諸堂社の改廃合併によって、米(ヨネ)地蔵と庚申尊などを本堂内に安置申しあげるようになった』
とある。
 明治政府による神仏分離政策の混乱のなかでの出来事だろうが、ご住職の話でも、当院に庚申尊が祀られた由緒はわからないが、庚申日には護摩供養をおこなっているという。

 尊勝院本堂正面の厨子内に本尊の元三大師像、その左に千手観音像が立ち、両像に挟まれた奥に『庚申尊』が祀られている。当院の庚申像は“青面金剛”というが、大きな鏡が置かれているだけで尊像の存否は不明。
 鏡の両脇に二童子像があり、前に赤いチャンチャンコを着た猿が置かれているから、この鏡をもって青面金剛を表しているのであろう。あるいは鏡面に尊像が線刻されているのかもしれない。
 しかし堂内が暗いうえに祭壇との間に間仕切りの格子があって近寄れず、よくわからない。掲示されている古い写真では鏡の前に猿・6体が数えられる。三猿2組ということか。また本堂左手の天井からは“庚申尊”と墨書した大きな提灯がさがり、脇の壁には“くくり猿”がまとめて飾られている。
 本堂内に掲げられている由緒書きにも、『庚申尊−青面金剛尊と三猿−伝教大師作』とある。見ざる・聞かざる・言わざるの所謂三猿は伝教大師・最澄が唐から将来したとの伝承もあり、当院が天台宗に属していることから、この伝承を受けた説明と思われる。

尊勝院−本堂
尊勝院・本堂
尊勝院−くくり猿
庚申尊大提灯とくくり猿
尊勝院−青面金剛
庚申尊(掲示写真転写)

 ちなみに、尊勝院は天台宗に属する寺で、保延年中(1135〜40)、鳥羽法皇の勅により陽範阿闍梨が比叡山・横川に開いた尊勝坊がはじまり。その後、粟田口の青蓮院・三条白川坊の裏に移転し、応仁の乱で荒廃したのを豊臣秀吉が再建した(文禄年間1592〜96)という桃山様式の寺で、大正4年に本堂のみが現在地に移転している。
 かつての庚申日には、麓の町中に夜店が出るほど賑わったというが、今は閑散としている。本尊として元三大師像を祀ることから“元三大師堂”として知られている。


猿田彦神社−−山ノ内庚申堂−−京都市右京区山ノ内 荒木町   2007.9.23参詣
 当猿田彦神社は京福電鉄嵐山線・山ノ内駅の西に鎮座し、祭神は庚申信仰では珍しい『猿田彦大神』である。
 社頭の由緒略記によれば、
 『当社は山ノ内庚申といい、京洛三庚申の一社に数えられ、洛西の旧社として著名なお社である。猿田彦大神は道ひらきの神、人生の道案内の神として知られている。見ざる・聞かざる・言わざるの三神猿は、世の諸悪を排除して開運招福をもたらす崇高な御神教を示すものである』
とあるが、庚申についての説明はなされていない。

 境内西寄りに鎮座する本殿は、忘れられた地域の鎮守社といった趣で、一見しただけでは庚申さんとの関わりは感じられない。ただ本殿右の由緒略記に「山ノ内庚申・猿田彦神社」とあること、社殿前に神猿像が安置されていること、あるいは社務所前に並べられた小さな“くくり猿”のお守りなどで、当社祭神・猿田彦が庚申であることを示している。

 今、当社は山ノ内町にあるが、明治18年までは少し北の安井村松本郷にあったようで、この辺りの鎮守社だったと思われる。また、境内に修験道の行場があったようで、愛宕詣りの人々が滝に打たれて身を浄めたともいう。今でも、初庚申の日には境内で護摩焚がおこなわれるというから、修験道の色合いが濃い神社といえる。

猿田彦神社−入口
神社入口
猿田彦神社−本殿
猿田彦神社・本殿
猿田彦神社−お守り
    布神猿        左縄
●お守り

 本殿脇の縁側に“お守り”が幾つか置かれていて、次のように説明されている。
・蒟蒻−−中風・神経痛・腰痛・病気封じ−−氏名・年齢を書いて祈祷をうけ、持ち帰って願を かけて神棚に祀る。昔は就寝時の枕の上に吊した。
・左縄−−盗難除け−−左縒りの注連縄で、玄関や勝手口・戸袋・金庫などに吊す。
・布神猿−−手芸の上達を願って奉納する。また腰や財布に付けて除福招福を祈る(小型のくくり 猿だが、古代の曲玉マガタマのように見える)
 その他、家内安全・商売繁昌・交通安全・開運厄除けのお札、方除(カタヨケ)・清め砂なども分けている。
 形は異なるものの、ご利益の内容は四天王寺や八坂のそれと大小同意である。

 青面金剛を本尊とする仏教系の庚申堂が多いなか、猿田彦を祭神とする神道系の庚申堂は珍しいということで、庚申日に訪れたが、宮司さん不在で何も聞けなかった。

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