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月神信仰/樺井月神社(城陽市)
水主神社境内社
京都府城陽市水主宮馬場
祭神--月読命

 延喜式神名帳に、『山城国綴喜郡 樺井月神社 大 月次新嘗』とある式内社だが、今、同じ式内社・水主神社の境内社となっている。

 近鉄京都線・富野駅の西北西約1.2㎞、田圃に囲まれた叢林に鎮座する『水主神社』(ミヌシ・ミズシ、式内大社)の境内にある祠社だが、古く、延喜式神名帳・山城国綴喜郡十四座のなかの式内大社で、月次新嘗の奉幣に与る古社であり、古くは、それなりの結構を構えていたと思われる。
 同じ月読命を祀る月読神社(京田辺)からみて北東、木津川の対岸(右岸)に当たる。南面する神社の背面には叢林におおわれた小高い丘が連なり、その一角をかすめて京名和自動車道が通っている。

 田圃の中を通る参道の入口には、右に「樺井月神社」(裏面:大正13年2月、樺井氏一族建之)、左に「村社 水主神社」(右側面:宮馬場鎮座、裏面:明治36年1月)との石柱が立ち、参道の途中に一の鳥居、その先鎮守の森の前に二の鳥居が立つ。
水主神社・参道
水主神社・参道

 社殿は、割拝殿(中央に通りぬけできる通路をもつ拝殿)とその左右に続く金網で囲われた中にあり、通常は通路閉鎖のため中に入れない。隙間から覗くと、中央奥瑞垣に囲まれて水主神社の本殿が、囲いの左手前に樺井月神社が鎮座する。他に小祠3座(野上社・金刀比羅社・稲荷社)がある。

樺井月神社・石柱
樺井月神社・石柱
樺井月神社・社殿
樺井月神社・社殿
樺井月神社・側面
同・側面

 割拝殿内および一の鳥居脇の下馬標裏面に記す由緒その他資料を要約すれば、
「祭神は月読命。延喜式神名帳に山城国綴喜郡 樺井月神社とある式内社で、文武天皇の大宝元年(701飛鳥末期)に神稲を賜り、清和天皇の貞観元年(859平安前期)に従五位上に叙せられた。元は木津川をはさんだ対岸の綴喜郡樺井に鎮座していたが、度重なる木津川の氾濫により寛文12年(1672江戸前期)に当水主神社の境内に遷座した」という。
 大宝元年の神稲奉祀は、当社がそれ以前からあったことを示すが、その創建時期についての資料は見当たらない。月読神社(京田辺)とあまり違わない頃かとも推測されるが、大住郷に居住する大隅隼人と阿多隼人が、それぞれ別の月読社を構えたのかもしれない。

 また当社の旧社地・樺井の場所も不明。大住郷の高台にある月読神社(京田辺)の北東方・木津川べりの低地にあったのでは、という(木津川の中州にあったともいう)。また、月読神社と水主神社を結ぶ線を延ばすと、日神を祀る水度神社(ミト)から神奈備山・鴻巣山山頂に至り、この線は夏至の日の出の方角という。ここから樺井月の旧社地は“この線上の何処かにあった”と推定されている(大和岩雄「水主神社・樺井月神社」)

 由緒は続けて、
 「仁明天皇の承和12年(845平安前期)8月、京畿の地に疫病が流行し綴喜相楽両郡の牛馬が多数斃死したとき(二蝱虫-アブの類-が多発し、牛馬がこれに咬まれて斃死相次いだ。占うと樺井神道祖神の祟りと出たので、ともいう)、勅使が当社に奉幣祈願したところ忽ちにして治まった。以来、牛馬の守護神として朝野の崇敬をうけた」
という。牛馬の疫病とは季節の変わり目(夏の終わり頃)に多い疫病の流行だろうが、人間への影響は記されていない。

 綴喜郡大住郷に、同じ隼人族が祀る月読社がそれも近接して2社あるというのも珍しいが、その一社が遷座するにあたって、同じ月神を祀る月読神社(京田辺)ではなく、対岸の久世郡にある水主神社境内に鎮座したのは、それなりの理由があったらしい。
 資料(大和岩雄・前掲書)によれば、当社の旧社地・樺井と対岸の水主との間には“樺井の渡し”があったことから、当社は、木津川渡河の安全を掌る“渡しの神”、いいかえれば綴喜・久世郡の境界である木津川の両岸に祀られた“塞の神・道祖神”的性格が強かったのではないか(橋のたもと・川端・峠などは彼我の境界としてカミが祀られることが多い)。そこから、同じ渡しの神的性格をもつ水主神社境内に遷ったのではないか、という。
 月神は、潮の干満ひいては河水の増減をも掌ることからみて、渡しの神としての性格も併せもつといえる。

※水主神社(概要)
 水主神社は、当地方を開発した水主氏の始祖・天照御魂神(アマテルミタマ)以下10柱の神々を祭神とする式内大社。崇神天皇の頃創建されたという伝承は別としても、仁明天皇の御代(833~50)に神階を叙せられたというから、古くから当地方の鎮守社として崇められた社であろう(別稿「水主神社」参照)
 アマテルミタマ神はアマテラスの孫・火明命
(ホアカリ)の一般的呼称ともいわれ、“天照”を冠するように日神的性格をもつ。とすれば、木津川を挟んで月神と日神が祭られていたことになる。

水主神社・割拝殿
水主神社・割拝殿
水主神社・本殿
水主神社・本殿

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